気ままな映画レビュー「LION ライオン 25年目のただいま」

映画

17年5月26日

「アカデミー賞最有力候補」と言われている本作品。インドで迷子になった5歳の少年が、25年後にGoogle Earthで故郷を探し出したという実話を元に、「スラムドッグ$ミリオネア」で主演を演じたデブ・パテと、ニコール・キッドマンら豪華キャスト共演で映画化したヒューマンドラマ。

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<あらすじ>
1986年、インドのスラム街で暮らす5歳の少年サルーは、兄と仕事を探しにでかけた先で停車中の電車で眠り込んでしまい、家から遠く離れた大都市カルカッタまで来てしまう。そのまま迷子になったサルーは、やがて養子に出されオーストラリアで成長。25年後、友人のひとりから、Google Earthなら地球上のどこへでも行くことができると教えられたサルーは、おぼろげな記憶とGoogle Earthを頼りに、本当の母や兄が暮らす故郷を探しはじめる
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この主人公のモデルとなった人物のドキュメンタリーがTV番組でもやっていたので、そちらを観た方もいるかもしれません。一見すると、最近良くありがちなストーリーかな、と思うのですが、故郷を探す手段が「Google Earth」というのが何とも現代的で、かつ、実際にあった話ということで、そういう観点でもとても興味深い作品です。

引き取られた養子先での生活はインドにいた頃とは違い、裕福な環境で、順風満帆な人生を送っていたサルー。そんな恵まれた環境でも、自分のルーツを知りたいという、その感情はどこから沸き上がるのか、、、。正直最初はわかりませんでした。
「生まれ故郷」を探し始めると、これまで順風満帆だった生活が徐々に崩れて行きます。心から分かり合える恋人との別れ、そして養子先の両親とも「実母を捜している」という後ろめたさから、距離を置き始めるようになります。自分だったら、今の生活を壊してまで過去を知りたいと思うか、、、おそらく答えはNOです。

サルーが迷子になったのはわずか3歳。その頃のおぼろげな記憶を元に生まれた場所を見つけ出します。「3歳の頃の記憶なんてあてにできない」と客観的には思えるのですが、サルーにとって「生まれ故郷」は、自分のアイデンティティーを知る唯一のもの。サルーの生まれながらの賢さもあると思いますが、執念のような必至さが伝わりました。
主人公のサルーは直感的に「過去の自分がいるから今の自分がいる」ということを分かっていたのだと思います。過去の自分の環境や周りの人の影響が今の自分を形成しているからこそ、今の自分がもっと前に進むために、過去を確かめたかったのではないか、と思いました。

映画を見終わって改めてこの話しが実話ということに驚きました。「事実は小説より奇なり」とは良く言いますが、私たちの人生は思いがけない奇跡が起こる事があります。それは、きっと一歩踏み出した人にしか訪れない特別な奇跡。今何気なく過ごしている毎日を特別なものに変えるかどうかは自分次第、そんな一歩を踏み出す勇気をくれる作品です。

witten by やまちゃん
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